今月は、換気システムが正しく作動しているか確認する為に、CO2濃度を測定してまとめましたので、その発表の場として、社長に変わりまして大澤が書かせて頂きます。
CO2濃度測定により、換気システムが正しく作動しているかを調べる
■目的
24時間換気の目的は、室内の汚染空気を排出し、外の新鮮な空気を取り込むことです。
汚染空気として外に出したいものは、VOCをはじめとしたシックハウス症候群の原因となる化学物質。これは建材だけではなく、家具や化粧品、洋服などからも出る事があります。人の呼気などで排出されるCO2。トイレやキッチンの臭い。洗面所(風呂)、台所の過度な湿気。などがあげられます。
・その汚染空気がちゃんと排出され、24時間換気がちゃんと機能しているのか調べる。
・換気システムのフィルターが汚れていても、汚染空気がちゃんと排出されているか調べる。
■実験した家の情報
・第1種換気。全熱交換器付き。給気・排気のフィルターは2カ月に一度掃除をしなければいけない。
・UA値0.28W/㎡・K、Q値0.98 W/㎡・K、C値(完成時)0.26㎠/㎡
・父、母、子(1歳)の3人暮らし。母は育児休暇中で4月より復職。子供も4月より保育園。
・1階リビング、2階寝室で、ほぼ総2階の約32坪です。体積はおよそ324㎥。
・天井に給気口、排気口を設置。1、2階共トイレの排気は腰の高さにしています。
・生活パターンは、平日は父5時半~6時に1階リビングに行き、出社。20~22時帰宅。0時就寝。
母・子は5時半~7時リビングに行く。そして朝食。昼前に外出。19時頃帰宅。子21時就寝。母0時就寝。
■実験方法
・今回の実験では、CO2濃度を測定する事で、汚染空気がちゃんと排出されているかの指標とします。
・換気が充分かという基準として、ビル衛生管理法の1000ppmとしました。
・1階リビングに佐藤商事の「データロガーCO2 濃度計MCH-383SDJ」を置きました。
1分ごとに温度(℃)、湿度(%)、CO2濃度(ppm)を測定してくれます。
・エアコンの直接当たらない場所。FL+800㎜の棚の上に置きました。
・2020年10月18日18:11開始 2021年4月22日0:25終了
・1000ppm以上か、それより小さいかを月ごとにまとめ、件数・割合をだす。
これにより、換気が出来ているかどうかが分かる。
・さらに、健康被害が出る可能性のある濃度として2500ppm、問題の無い濃度として800ppmの基準も加え、さらに細かく分けて件数・割合をだす。
・時間ごとのCO2濃度の変化を知る為、月ごとに祝日のない1週間を抜粋し、グラフにした。
そこに1000ppmのライン6時、11時半、19時のラインも加えた。
・換気システムのフィルター掃除の効果を知る為、掃除日を抜いた前後1週間でデータをまとめ、比較した。
また、その期間の夜中の2~5時でも比較した。日中は、人の人数・活動内容でCO2濃度は大きく変わるので、その変化の少ない夜中の時間を選んだ。
・19日9時頃から20日夕方18時頃まで不在だったため、CO2濃度は低い。
しかし、480ppm前後で変動があるのは24時間換気で外の空気が入ってきている影響だからなのか?
→人がいなくてこの程度の変動があるので、今回の実験では、この程度の変動は誤差の範囲と考えます。
・21日(水)は父午後1時過ぎ帰宅。大人2人、子供1人リビングに集まると1000ppm超えてしまった。
・25日(日)は父仕事の為いないので、平日とあまり変わらない。
・24日(土)15時から上がったのは不明。
・午前中の母と子の活動でCO2濃度は増えるが、1000ppmは越えない。
しかし、22日(日)は父もいるので(大人2人子供1人)、CO2濃度は高くなっている。
・この週はリビングで活動している時間は800~1000ppm程度、夜などリビングにいない時は700ppm以下になっている。
・20日(日)は父もいるので1000ppm超える時間があった。
14時頃外出し、17時ごろ帰宅したのだろう、その期間CO2濃度が下がっている。
・24日(日)は父仕事の為、ほぼ同じグラフになっている。
母1人、子1人なら1000ppm超えていない。
・17日(水)は来客があり、大人2人、子供2人となった。なので、14時頃をピークに上がっている。
・21日(日)は父もいるのでやはりCO2濃度が上がっているが、17日よりの方が少ない・・・。
人数だけではなく、体格や活動内容によってもCO2排出量は個人差があるのだろう。
・14日(日)は父もいたはずだが、午後は外出したのか平日とあまり変わらない。
・保育園が始まり、育児休暇から復職。活動時間の変化があり、特に朝の時間がずれた。
しかし、人数や活動内容の変化はないので、CO2濃度の濃さは変わらず、時間帯がずれただけだ。
・18日(日)父いないので、平日とあまり変わらない変化で1000ppmを超えていない。
・15日(木)は9時過ぎに窓開けたのか800から500まで急激に下がっている。
→窓開け換気は、風向き・強さ、窓を開ける大きさ・向きなどで変わりますが、効果があるのがよくわかりました。
・年末年始の連続して家族がいる時間が多い期間でも、1000ppmを超える事はわずかだった。
・人の動きによっての変化は多少あるものの、上にあげた表でも、このグラフでも、掃除の前後で大きな違いは見られない。
・12月6日はお爺さん、お婆さん呼んで子供の誕生日祝いをしたので、大人4人子供1人で食事をすると、1600ppm近くまで上がる事が分かった。
■考察 その1
・フィルター掃除の前後1週間の比較では、人の活動の影響が大きい日中でも、大きい差はなかった。12月6日に人が集まったのでそれは除いて。
・人の活動の影響の少ない2~5時でも、CO2濃度が多くなる場合も少なくなる場合もあり、変化も5%程度で少ない為、2カ月間ではフィルターの目詰まりはひどくならないのが読み取れる。
・掃除前後だけでなく、11月29日前後と2月24日前後を比べても大きな差はない。「フィルター掃除だけでは汚れが落とせず、徐々に蓄積していっている。」という状況でないのが読み取れる。
※しかし、これはCO2濃度の変化であり、風量が変わったかは分からないので、「2カ月ではフィルターは目詰まりに影響がない」とは言い切れない。これは2022年の1月頃のフィルター交換の時に(この換気装置のフィルターは、2カ月に1回掃除、2年で交換です)、風速計を用いて測ってみたいと考えています。
■考察 その2
・0時に2階の寝室に行くので、1階リビングに人のいない0~6時を見て頂きたい。
0時で800~900ppmあると6時頃まで下がり続け600ppm程度になる。(6時間で300ppm)
10、11、12月の様に0時で700~800ppmとそこまで高くないと3、4時まではスムーズに600ppmくらいまで下がる。そこから、ほぼ横に動くようになる(変化が少なくなる)。(4時間で200ppm)
・人がいない10月19日の10時の640ppm位から、500ppm程度で変化が少なくなるまで4時間くらいかかっている。
→24時間換気は、2時間に1回部屋の空気を入れ替える換気量になっている。しかし、上記の、2時間でCO2の変化が止まらない事から、2時間に1回完全に入れ替えているわけではないのが分かる。
排気の空気は、室内の空気だけではなく、取り込んだ新鮮な外の空気と多少混ざりながら出て行っているようだ。
※1000PPMを超えるのは全体の1%であり、人が集まっている短時間だけだった。また、1000PPMよりも大幅に超える事はないため、「大人2人子供1人の家族ならこの換気システムは充分機能している」と言っていいだろう。
■考察 その3
・フィルター掃除後のグラフの12月6日では、大人4人子供1人の環境になると1600ppm位まで上がっている。
16時頃からすぐ下がっているので、一時的であれば大きな問題はないと思います。
換気量=換気システムの風量は家(部屋)の体積で決まっています。家族構成や住まい方などは考慮されていない事が多いです。なので、多い人数が同じ場所に集まる事が多い。集まる時間が長い場合は考慮すべきかもしれません。
その方法としては、
①人が集まっている時は少し窓を開ける。(30分ごとに5分開ける程度でもよい)
②キッチンの換気扇など、24時間換気以外の換気も併用する。
③その部屋の換気装置の換気量を増やす。
④CO2濃度計と連携して、設定値以上になったら通常運転から強運転に変わるものを創る。
などが考えられます。